九州廃校学会の案内
2025年12月6日(土)13:00~
場所:宮崎県えびの市小田359番地(元営林署)
日本建築学会 講演発表:瀨之口稔
九州大学伊都キャンパス2025/9/12
廃校活用における持続性の阻害要因に関する研究
-南九州3県(宮崎・鹿児島・沖縄)の事例検証-
瀨之口(宮崎大学)による廃校調査の現状報告
2024年6月から開始している行政機関を中心とした調査アンケートについて
自治体への現地調査の現状
宮崎県(26市町村)…調査収集26(回答率100%)
鹿児島県(43市町村)…調査収集39(回答率91%)
沖縄県(41市町村)…廃校有のみサンプル計上 10/12(回答率83%)
以上のような調査結果を整理していますが、論文の完成及び発表に至っていません。調査研究の今後の作業として、各自治体担当者に提供してもらった情報に基づき詳細調査を継続して、これらの活用実態に学び、持続的運用の方向性を考えていきます。
論文の公表には、関係者への聞き取り情報がセンシティブな内容を含むために、調査協力頂いた関係者に承諾を得る必要があります。そのプロセスが完遂しておりませんので、早急に了承を得るべくご連絡並びに訪問させていただく所存です。
詳細事例の概要…阻害要因(苦労した点)について
…詳細は論文にて公表予定
事例1 新富町宿泊交流施設OIWAKE-BUNKO(宮崎県新富町)
事例2 お肉の直売所西都(宮崎県西都市)
事例3 NPO法人 Turtle Crew(鹿児島県中種子町)
事例4 土川学園(鹿児島県いちき串木野市)
事例5 えびの温泉トラフグ(宮崎県えびの市)
事例6 Terra(宮崎県えびの市)
事例3 NPO法人 Turtle Crew(鹿児島県中種子町)
① 廃校年:2004年(平成16年)
② 当該校舎の構造及び築年数:鉄筋コンクリート造、1972年(築52年)
③ 施設名称:Turtle Crew
④ 用途:うみがめ調査保護事業
⑤事業者:NPO法人Turtle Crew
⑥期間(廃校活用):2013年(平成25年)~2017年(平成29年)
⑦使用形態:貸与
⑧賃貸料:46,000円/年
⑨改修費:事業者
⑩補助金の内容:無し
平成17年6月に『公共用地(施設)跡地利用内部検討会』を発足し,旧中学校の活用等を含めた公共用地等利用についての協議のため複数回開催。その後,平成23年8月1日付けで『中種子町公共用地跡地等利用検討委員会』を設置し活用等に関し協議した。その後、施設の利用申請に伴い教育行政財産から普通財産へ所管替えを実施した。
現状
南界中学校は、2004年(平成16年3月)に廃校となったが、2013年からウミガメの調査研究をしている「NPO法人Turtle Crew」としても運営されていたが、2017年に撤退した。
Turtle Crewが撤退後に、「よっちぇいけや南界朝市実行委員会」が活動拠点として再々活用している。施設の活用は地元の事業者がほとんどであり,撤退後もスムーズな活用が行われている。
活用を始めるのに苦労した点
南界中学校については、平成24年度(2012年)に実施した耐震診断の結果、屋内運動場(体育館)を除く武道場棟、管理棟、普通教室棟のls値(耐震の指標)がそれぞれ基準の0.6に達していないため貸借に至っていない。
今後の方針として、中種子町の担当課では、老朽化した校舎の廃校活用を長期持続させるための具体的施策についても検討している。各施設等の老朽化に伴い修繕箇所も増加傾向にある中で,行政側として公有建物災害共済に加入しており,災害に伴う破損等の復旧について対応している。傾向施設の老朽化に伴い、維持補修の係る経費も年々増加傾向にあり、費用対効果も考慮しながら撤去・解体等も含め今後の施設のあり方を検討する必要があると感じている。


耐震診断基準「2017年改訂基準」
建築基準法による新耐震基準施行1981年(昭和56年6月1日)以前に建築された建物に対し
て、現行の耐震基準(新耐震基準)により、その耐震性を評価し、地震に対して安全であるか
を見極める行為
Is≧Iso
Is :構造耐震指標
Iso:構造耐震判定指標
(第1次診断:0.8,第2次診断:0.6)
事例2:お肉の直売所西都(宮崎県西都市/西都商業高校)
[調査期間:2024.10.22~2024.11.15]
① 廃校年:2020年(令和2年3月閉校)
② 当該校舎の構造等:鉄筋コンクリート造 1976年(昭和48年)建築
③ 施設名称:肉の直売所 西都
④ 用途:店舗
⑤ 事業者:カミチクホールディングス(所有者:株式会社 日南)
⑥ 期間(廃校活用):2024年(令和6年)~
⑦ 使用形態:(株)日南へ譲渡、(株)日南がカミチクグループに賃貸
⑧ 譲渡費用:有償(土地)、無償(校舎等)
⑨ 改修費:事業者
⑩ 補助金の内容:なし


写真:西都市より提供


西都商業高校跡地の活用については、県立高校のため宮崎県から西都市へ所有権を移転することで、企業への譲渡を可能にした。当該事業は、事業者(代表者が西都出身)の「ふるさとの発展に寄与したい」という思いと、自治体との信頼関係が基本となり事業が展開されている。廃校活用として開店した「肉の直売所、西都」では、西都市の農場で育てた食材を中心に、県産・九州産の牛肉や豚肉、オリジナル加工品、県産野菜などを販売している。更に店内で選んだ食材を、その場で焼いて楽しめるセルフ焼肉のスタイルが特徴となっている。
直売所の開店はできたが西都商業校跡地全体の活用については目途が立っていない。地域住民等から要望の強かった宿泊施設などの活用が実現できるかが今後の課題になる。西都市の意向として、住民からの要望に応えるために宿泊施設の整備を行うこと。更に毎月1万人の集客がある妻湯温泉と西都商業高校跡地を結ぶ動線の確保を実現して、地域の一体的整備を目指している。今後の跡地利活用を勘案した道路建設計画は、住民の理解が不可欠になる。
西都市は、用途地域等の変更や条例の制定も行っている。具体的には、①都市計画区域において、第一種住居地域から第二種住居地域に用途変更 ②調殿地区整備計画区域を決定 ③西都市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の制定をした。(第二種住居地域で建築可能な建築物の一部を用途制限)この施策により、将来的な構想である宿泊施設等の整備が可能になった。また、建築制限の条例制定により、第二種住居地域に変更したことに伴って建築可能になった、麻雀屋・パチンコ店の建築を制限して立地環境の保持も行っている。
事例1
新富町宿泊交流施設OIWAKE-BUNKO(宮崎県新富町/富田小学校追分分校)
[調査期間:2024.10.22~2024.11.15]
富田小学校追分分校は、富田小学校の分校として昭和22年に開校した。1年生から3年年生までの低学年までを対象とした分校だったが、少子化により富田小学校に統合されることとなり、平成24年に校舎の役割を終えた。
およそ10年程度、廃校として利用のなかった校舎を、一般財団法人「こゆ地域づくり推進機構」が、農水省補助事業等を活用して宿泊施設として蘇らせた。


富田小学校追分分校は2012年(平成24年)に校舎の役割を終えたが、長くその後の利活用が決まらず、施設の老朽化が進んでいた。利活用の方向について、町民の意見を聴取した結果、新富町には宿泊施設が少ないということと、一方でスタジアムやフットボールセンターの整備に伴い、サッカーを中心とした大会や合宿で町を訪れる団体が多くなったため、そのニーズに応えるための施設を再利用することになった。
活用を始めるに際し、校舎を宿泊施設として用途変更するために、消防署や保健所などとの事前協議に苦労した。

新富町総合政策課の情報では、当該施設の活用で一番苦労したのは建築基準法、消防法等への対応だったとの回答を得ている。
当施設の敷地は都市計画区域外である。従って都市計画法は対象外であるが、建築基準法の集団規定は制限を受けないが単体規定が問題となる。特に課題として残ったのが建築基準法の耐火区画だった。建築基準法施行令第114条2項によると、学校・病院・宿泊施設等は、「防火上主要な間仕切壁を準耐火構造以上とし、小屋裏又は天井裏に原則は達せしめなければならない」と規定している。具体的には、3室かつ100㎡以内ごとの主要な間仕切壁が対象となる。

写真等:新富町より提供
左図に示した赤表示の部分は、学校であれば開口部と見なされ窓が付いていても緩和される。しかし、宿泊施設の場合は認められないので窓等にはできない。
新富町の担当者は、ローカから寝室(旧教室)が見えるようにしたかったが認められなかったと嘆いておられたが、建築基準法上では認められない。当該施設の場合、キッチンにおける保健所対応にも苦慮したと聞いている。